AmazonのDX事例2

<アマゾンカスタマーサービスより>

今回ご紹介するのは「置き配」についてです。

これはDXではないかもしれません。

通常、荷物はちゃんと届けないとクレームになります。

日本の宅配会社のほとんどは必ずハンコかサインをもらう仕組みとなっています。

いまでも置き配に不安感があるユーザーもいますが、徐々に仕組みとしては受け入れられているように思われます。

アマゾンが置き配を選んだ理由

宅配会社の労働環境が問題になりました。

配達しても留守の場合、再度訪問が必要になります。何度も同じ配達先に訪問することもあり効率的ではありません。

そのため配達する人は長時間労働になりがちです。

Amazonはこれを解決する方法として「置き配」を採用しました。

コスト・時間(従業員の労働時間)・商品・消費者の利便性という点を考えたときに「商品」が優先順位として一番低くなったのでしょう。

(1)従業員増員

(2)現従業員の長時間労働でカバー

(3)無くなった商品の補償

を考えたとき、(1)は採用コストも考えると最も高く、(2)は長期的にみても企業の姿勢としても良くない、となります。

必然的に(3)の届かなかった商品を返金もしくはもう一度商品発送、となったのでしょう。

置き配だけが対策ではない

とはいえ、弁償すればいいというわけではないでしょう。

商品が到着すると思っていた日に到着しない、使いたかった日に間に合わないこともあります。

アマゾンは自社の効率化と社員の労働環境改善だけを進めたわけではありません。

顧客のこともしっかり考慮しました。


1.送料無料

アマゾンプライム会員の場合、かなりの商品が送料無料です。

これは顧客の囲い込みだけではなく、金額の低い商品をネット販売する場の提供に相当な効果があります。

楽天市場がある価格以上買うと送料無料という考えを示しました。

当然アマゾンを意識してのことですが、それだけではなく送料がユーザーにとって不便という問題の改善への一手でした。

(例えば、購入手続きまで送料がわからず結局思ったより高くなるなどの不明瞭会計問題や、商品自体は安く送料を商品の数倍などに設定する詐欺行為に近い問題などが発生)

アマゾンが送料無料にできるのは置き配なども含めた配送効率化と倉庫内作業の効率化、商品の一局集中+預かり管理による全体戦略によるものです。


2.配達リードタイムの短縮

徹底した効率化と商品を提供者から自社倉庫で預かる方式により、注文を受けて最短当日納品という離れ業を行えました。

このリードタイムの短縮により、万が一商品が届かないなどで送り直しをしてもユーザーに出る被害を最小限にしました。


3.対応力強化

ネット対応はどの会社も一律、直接の問い合わせ先がわかりづらい、もしくはつながりづらい仕組みになっています。

クレームなどの連絡を避けたい気持ち、クレームを受けるカスタマーサポートなどのコスト圧縮、などが理由です。

大抵は電話番号が見つからない、かけても「混み合っています」で繋がらない、「担当部署へおつなぎします」とたらい回し、など皆さんもご経験があるかもしれません。

その上、携帯電話ではかけられないフリーダイヤルと0570のナビダイヤルなどにより、不具合で迷惑を被っているユーザー側が通話料金を負担する場合まであります。

これに対してアマゾンはネット販売企業にしては画期的なカスタマーサービスを提供しています。

<アマゾンカスタマーサービスより>

不具合や問題があった場合、チャットなどですぐに対応もできますが、電話で確認したい・伝えたい、というときもあります。

そういった場合に電話する先、ではなく、電話をかけてもらう仕組みを作りました。

<アマゾンカスタマーサービスより>

問題のカテゴリや該当購入履歴などを選択して、最後に電話ボタンを押すと登録していた携帯番号に電話がかかってきます。

<アマゾンカスタマーサービスより>

上記のように「電話」を押せば、すぐに電話がかかってきます。

良い商品を買えたときなど、「良い状況」で連絡するユーザーはいません。

大抵連絡するときは不明・不安・不満のときです。

そういったときに、なかなかつながらない場合イライラは増幅させます。

すぐに対応してくれた時には、問題があったにも関わらず逆に気持ちよくなるものです。

DXに大事な考え方

アマゾンの考え方からも学べるように、DXする場合、

・優先順位を考える(具体的に数値で)

・顧客の心情を考える

・全部解決や全部DXを考えない

という点が重要です。

優先順位ですが、「商品が届かなかったらどうするんだ!」となるかもしれません。ですが、商品が届かない確率がどれくらいあるか、届かなかったときにどんな損害があるか正確に計算し、実際にかかっている残業代やその問題を放置した結果、人手不足や求職者不足になることを考えれば、商品が紛失して再配達することは大した問題ではないと気づくかもしれません。

次に顧客が何を望んでいるか、何を許容できるか(許容できないか)を考えることです。

問題があってもすぐに対応して、再配達してくれて、キャンセルもすぐにできるならどうでしょう?

買おうかどうしようか迷うことが減るかもしれません。

そしてこれはどの企業にも言えることですが、DXするときに全部システムで何とかしようと思ってしまい高額な構築費用になってしまいます。その結果、導入せず従来の方法を続けるかもしれません。

DXは出来る部分から、アナログな対応が効果的な部分はそのまま、という選択肢もあり得ます。

DXの考え方や導入戦略などを当社はお客様と一緒に考えています。

ぜひお困りごとや課題をお持ちの場合はお気軽にご相談ください。